インタビュー&コラム
INTERVIEW

「自分を売りものにできる場所に」CFOインタビュー


「自分を売りものにできる場所に」CFOインタビュー 株式会社インフォネット - 日下部拓也氏
CMSサイトを軸に、サイトの構築から運用・保守まで、トータルマーケティングサービスを展開する、株式会社インフォネット。2019年6月25日にマザーズ上場を果たした同社取締役CFO日下部拓也氏にお話を伺った。

キャリアのスタートは税理士法人。業種問わず担当し、知見を磨いた。

― まずは日下部さんがCFOになるまでのキャリアについて教えてください。

 私のキャリアのスタートは税理士法人からでした。国内法人部に所属しており、特に専門領域はなく業種は問わずに担当していました。そのあとの監査法人も同じですね。スタッフという立場だったのもあるかと思いますが。

―  様々な業種を担当するなかで、それぞれ特色や違いはありましたか?

 税務と監査では、論点が異なってきますが、一貫していえることは例えば、製造業は原価、小売業は棚卸、といったように、様々な業種が論点にすることや、その中身を知ることが出来たのは強みになりましたね。税務も監査も、普通に企業のなかで経理業務をするだけでは見ることができないものも見れますし。

 また、税務と監査は、ある意味疑ってかかるのが仕事になるので、すべてにおいて裏付けが必要なのですが、その視点は現在においても自分の業務のベースになっていると思っています。 

 その後、事業会社に転職しましたが業務の一つ一つを税務・監査の双方の視点で検討できるようになれたことも良かったと思います。


― 事業会社では、税理士法人や監査法人での経験が活かされたことはありましたか?

 入社した会社は、当時マザーズ上場直後で、東証一部への市場変更の準備中でした。監査が入っていたので、監査を受ける上での、勘所のアドバイスを的確に出来たのは良かったと思います。

― では、その事業会社では市場変更を主なミッションにされていたのですか?

 そうでもないです(笑) 
 事業会社にいった経緯は、純粋に別のことがしたかったということがあります。事業会社ならどこでも良かったのですが、その会社が創業から3年半でマザーズに上場していて、しかも独立系だったので、純粋に興味がありました。加えて、当時のCFOが会計士だったこともあって、急成長ベンチャーで専門性を磨けるのではないかという点に魅力を感じて入社しました。ポジションは経理のいちプレーヤーとしての入社でした。

― 税務・監査の業界から、いきなり事業会社の経理実務に入る苦労はなかったのでしょうか?

 仕訳を切るのもシステムに入力するのも初めてなので、多少不安はありました。でも、初めての業務であったとしても例えばその仕訳入力が、どういう資料になり何が必要とされるのかというゴールは見えているので、なんとかなりました。


自分を売り物にしたくてもう一度会計業界に。そしてインフォネットとの出会い。

― 一度事業会社へキャリアチェンジしたら、そのまま事業会社でやっていくケースが多いように思いますが、日下部さんは会計事務所に戻っていますよね。どうしてでしょうか?

 事業会社に入って仕事をしてみて、実際にお役に立てたと思いました。一方、自分自身が売り物ではないということに少し物足りなさやさみしさも感じたんです。売れる資格(会計士資格)を持っているので、それを売るということをもう1度やりたいと思いました。

 そう思って転職した会計事務所は、デューデリジェンス(以下、DD)などを中心に行っていて、やったことのない分野だったので興味を持ちました。DDをやる理由も色々あって、M&Aと、金融支援を受けたいのとではやることが違います。

 金融支援を受けたい場合のDDは、通知表で例えるとどこが1なのかを探すところから始まる。再生計画につながる起点を定めるところからですね。そのためには、数字という事実だけを見るのではなく、経営者と対話することが大事だと学びました。数字だけを見ていると、セオリーなんかも分かるので先入観を持ってしまうんです。でも、どうしてそうなったか、そこにどんな想いや考えが働いていたかを聞ければ、経営者がどうしていきたいかという方向性が分かります。

 DDのあとは、経営者と一緒に立てた再生計画に沿った事業計画通りに進行しているかを見て行くことになりますので、この過程はおもしろく、性に合っていたと思います。