インタビュー&コラム
INTERVIEW

人事労務・知的財産法・経済法分野は要注意 上場審査の最新動向とは?



これからのIPO準備はIPOに関する経験と実績豊富な弁護士のアドバイスが必須

「IPOに強いリーガルパートナー」としてベンチャー・スタートアップ企業を中心に多くの上場準備企業及び上場企業から指名されるフォーサイト総合法律事務所。直近7年で顧問先、社外役員関与先等のクライアント企業約40社がIPOを果たし、約20社(直近でIPOしたクライアント企業と重複あり)が東証一部市場に変更を果たしている(2018年10月現在)。代表パートナー弁護士の大村氏に、最新の上場審査の動向やIPO成功の秘訣を聞いた。

大村 健 氏
フォーサイト総合法律事務所代表パートナー弁護士。1974年生まれ。中学生時代から起業家を志し、中央大学法学部在学中に司法試験合格。東証マザーズ市場開設と同じ1999年に24歳で弁護士登録。2011年にフォーサイト総合法律事務所を開設。ベンチャー・スタートアップ企業及び上場企業法務、IPO、M&Aを得意とする。

IPOに強いリーガルパートナーが最新動向を解説 IPO準備は弁護士が必須の時代へ

近年、IPOの審査が厳しくなっているというのは本当でしょうか?

―正直、証券会社も証券取引所も審査が「広く」「深く」「細かく」なってきた印象を持っています。特に適法性の確認は重視されていると思います。事業内容はもちろんのこと、労務管理について残業代の清算方法を細かくチェックするケースなどが出てきています。

また、最近増えてきたのが知的財産権の適法性確認です。R&D(技術開発)系の会社の特許だけでなく、全ての会社に関わる「商標」に関して厳しく審査される傾向です。自社の商号やサービス名を商標登録しているか、他社から訴えられるリスクはないか、仮に訴えられた場合は勝てるのか、といった点がチェックされます。その他、景品表示法や下請法等経済法関連の適法性確認も重点的になされているように感じています。

とはいえ、IPOは総合格闘技のようなもので、当該上場準備企業に関わる全ての法律が関わってきますので、最近のトピックで言えばとそうなりますということに過ぎません。

なぜ審査が厳しくなったのでしょうか?

―おそらく、上場後の不祥事を減らしたいという証券取引所の意向の表れではないでしょうか。アメリカなどでは上場審査の一端を法律事務所が行っていると聞いたことがありますが、適法性が重視されることは当たり前のことです。日本では法律事務所が審査を行うということになることはないと思いますが、今や日本でもIPO準備にIPOに関する経験と実績の多い弁護士を入れるのは必須といえるでしょう。

そして、証券取引所の審査が厳しくなってきていることに対応して、証券会社の審査も(時には輪をかけて)厳しくなってきているように感じます。

東京五輪後は景気低迷が懸念されますが、IPOを目指すなら急いだ方がいいのでしょうか?

―「上場するならなるべく早く、2020年までに」といった風潮に、私は危惧を抱いています。IPOとは目的ではなく手段です。しかし、まだ事業の成長を確信できていない段階の会社が焦って無理なスケジュールで準備を進めてしまうと、IPOそのものが目的になってしまい、上場後に事業がシュリンクする可能性が高くなるのです。そうなってしまっては、当該会社を信頼して株式を購入した多くの株主の期待を裏切ることになるばかりか、損害も与えることにもなりかねません。IPOの準備を始めるのは、上場後も見据えた事業計画が立ってから。扇動的な風潮に惑わされないことが大切です。


フォーサイト総合法律事務所の強さ

IPOに関してどのような法的支援を行っていますか?

―契約書や社内規程の整備、資本政策・資金調達・資本提携・業務提携の法務対応、会社法等の手続の確認、労務管理、知的財産権管理、事業内容の適法性の検討、審査に必要な法的助言などです。また、上場後はディスクロージャーに関することやインサイダー取引の該当性といったご相談にも対応します。その他、株主総会や株主への対応、コーポレートガバナンス・コード対応、株式報酬制度に関する対応、上場後ファイナンス、M&Aや出資に関する対応等も行います。

クライアントはどのような会社でしょうか?

―元々はIT企業が多かったのですが、今では人材サービス、不動産、外食など多岐にわたります。とはいえ、IT企業が多いことは変わりませんが。新しい分野ではバイオ・ヘルスケアやAI・IoT・ロボット関連の会社もあります。上場準備企業及び上場企業がほとんどです。

また、首都圏に限らず、北は北海道から南は九州まで、首都圏以外に本社があるクライアントも多数抱えています。地方はビジネス・ロイヤーが極端に少ないため、上場準備に入るだいぶ前の段階で私たちにご依頼いただくことも多いです。

なぜIPOに強いのでしょうか?

―私は、元々起業家を志して弁護士として起業しようと考えましたし、自分と同じような起業家を支援したいと考え、弁護士登録しました。弁護士登録の年に東証マザーズが開設されたのも宿命と考え、ベンチャーを始めとする上場を目指す企業及び上場企業を支援してきました。そういった企業に特化した企業法務で20年近い実績があります。さらに、15年以上一緒に働くパートナー弁護士は、人事労務・人材サービス(HR Techを含む)、IT・知財、不動産(ReTechを含む)、バイオ・ヘルスケアなど各々が得意分野を持っています。事務所全体で幅広い分野の豊富な実績があり、チームとして対応できることが強みです。

また、当事務所は弁護士13名(さらに、2018年12月に新規登録弁護士1名が加入予定)と司法書士兼行政書士1名が在籍していますが、ノウハウや経験等をスムーズに共有・継承するために生え抜きのメンバーにこだわっています。

これまで多くの会社ののIPOを成功させていますが、難しい案件もあったのでしょうか?

―上場審査の過程で審査に落とされたり、上場承認が下りた後、上場承認が取り消しになったケースもありました。しかし、私たちは諦めずに、適切に対応すれば上場できると考えており、クライアントも諦めずに頑張った結果としていずれのクライアントも上場を果たしています。

どのような会社のIPOを支援したいですか?

―一言で言うなら、上場後も引き続き成長していく見通しのある会社です。IPOは目的ではなく手段であり、成長の過程にあるものだと考えています。経営者の中には「IPO=儲かる」と誤解している方もいますが、一瞬儲かってもその後経営が悪化して自分の財産をすべてつぎ込むケースも間々あります。

 

IPOを成功させる秘訣と失敗しないリーガルパートナーの選び方とは?

IPOを成功させるために大切なことは何ですか?

―法務も含めた内部管理の観点からは「やるべきことをきちんとやり、余計なことをやらない」ことです。例えば、直前々期(N-2期)以降にそれなりの規模のM&Aを実施すると、当然審査対象となり、新たに加わった子会社の杜撰な労務管理が審査で問題視されるおそれがあります。審査項目が増えれば当然リスクが増えるため、本業に集中することが大切です。あくまでもIPO審査でのお話ですが。

IPOは企業が成長するための手段に過ぎませんので、ビジネス上はそのタイミングでM&Aをした方がよいということであればM&Aを優先した方がよいといった場合もあると思います。

リーガルパートナーに依頼する時期はいつが最適なのでしょうか?

―最も多いのは、直前々期(N-2期)や直前期(N-1期)に法律顧問契約を結ぶパターンです。近年は申請期(N期)からというケースもありますし、逆にN-3期やN-4期の段階からご依頼されることもあります。リーガルパートナーには可能な限り早く相談することをおすすめします。なぜなら、労務系分野や重要な契約書などにおいて「もっと前からこの方法・制度でやっておけばよかった」ということが出てくるからです。制度の不備でN-1期からN-2期に戻ってしまったり、すでにある契約書を事後的に修正する覚書が必要となり審査上のリスクが増したりします。

IPOを目指す経営者、管理部門の方に向けてメッセージをお願いします。

―弁護士だけでなく、監査法人、主幹事証券会社、IPOコンサルタント等を選ぶ際に最も大切なのは、IPOに関する経験と実績があることです。例えば、腹痛で眼科に行く人はいないでしょうし、とても難しい手術が必要となれば当該手術で経験と実績のある医師を選ぶでしょう。しかし、弁護士選びの場合はなぜか経験とか実績を考慮せずに、「昔からの付き合いだから」とか「大きい事務所だから」とかいった理由で選んでしまう会社も相当数いらっしゃるのです。例えて言うならIPOは難しい手術のようなものです。特に近年の上場審査は「広く」「深く」「細かく」なっていますし、トレンドもありますので、弁護士のIPOに関する経験と実績が重要です。

IPOは会社を大きく飛躍させる契機となります。上場準備や上場審査は今後ますます大変さを増しますが、真摯に向き合えば上場後に「やってよかった」と思えるはずです。一社でも多くの会社にIPO を成功させていただきたいと思います。

フォーサイト総合法律事務所
https://www.foresight-law.gr.jp/index.html
代表パートナー弁護士 大村健(第二東京弁護士会所属)
住所 〒100-0011東京都千代田区内幸町1丁目33号 内幸町ダイビル9階
所属弁護士等 弁護士13名(2018年9月現在。2018年12月に新規登録弁護士1名が加入予定)、司法書士兼行政書士1
開設 2011年1月


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