インタビュー&コラム
『研究者としてのCFOという存在』 CFOインタビュー
「AIではない」OriHimeが実現する分身という形
-社名も独特な御社ですが、どんな事業をされているのですか?
プロダクトとしては「OriHime」という分身ロボットをメインに開発製造しております。
このOriHimeが生まれた背景は創業者である吉藤(共同創設者 代表取締役CEO 吉藤健太朗氏)の引きこもりによる孤独体験がベースになっています。吉藤は自分が外に出られない時期に、「自分が外に出られないなら自分の分身を作って外に出たら良いじゃないか」と思いついたエピソードがあります。
そしてOriHimeという分身ロボットの開発に取り掛かって周りを見渡すと、同じような孤独体験を抱えた方が結構いることに気づき、その後『コミュニケーションで人類の孤独を解消する』という理念を掲げて会社を立ち上げ、今日まで運営しております。
孤独体験と言っても一概には言えない様々なケースがあると思いますが、孤独に関するあらゆる課題に対して、我々が開発・提供するテクノロジーで解消し、人々のつながりや居場所を増やしていきたいと思っています。
この「OriHime」のポイントは【分身】であるところです。AIではなくあくまで自分自身の意思の元に動く分身であり、自分でスマートフォンやタブレットを操作して動かすことが出来ます。まさに自分に代わってコミュニケーションを取ることが可能な分身ツールとして使っていただくことが可能です。
ロボットに人が入る、意思が宿るようなイメージを持っていただければと思います。
―確かに昨今ですとまずAI搭載を想像しますね。OriHimeはほかにどんなことができるのですか?
OriHimeには、他にも「OriHime eye+Switch」という意思伝達装置をつかって肢体が不自由な方でもOriHimeを動かすことが出来るようにしたり、「OriHime-D」という全長120cmの分身ロボットではちょっとした肉体労働、例えば飲食店での配膳等を通じたコミュニケーションが出来ます。
最近だと企業様の新しい働き方を模索していくユースケースが増えています。例えばモスフードサービス様が展開するモスバーガーの一部店舗にて、OriHimeがレジ受付を担当する『ゆっくりレジ』という実証実験を行っております。一般的にレジでは急いで注文を決めないといけないイメージがあると思うのですが、シニアの方やお子さんなど、メニューをゆっくり見ながら決めたい方もいらっしゃいます。そこでパイロットさんにOriHimeに入ってもらい、お客様と会話をしながら受付、レジ業務を行って頂いています。(パイロット=OriHimeを操縦する方の呼称)
OriHimeを使って実際に企業に就職されていく方も増えてきておりまして、そこでも本格的にサービスとして我々が責任をもってやっていこうという背景から、「アバターギルド」という就労支援のサービスも始めております。
―いま様々なロボット開発がなされているなかで、差別化のポイントはどのあたりにありますか?
「人の温かさと存在感」ですね。
ロボットと言いつつ人が入ることによって、中の人の存在感やその人によって生まれる臨場感は我々が一番大切かなと思っているところです。
それによって、そのときに必要としていなかった、意識していなかった「偶然のコミュニケーション」も発生します。雑談や意識していなかった人との繋がりもそうですね。ここはOriHimeの良いところとして伝えたいところの一つで、他のロボットにはないところかなと思っています。
実際使ってみると、本当にOriHimeがパイロットその人に見えてくるような、何か不思議な感じがあります。