インタビュー&コラム
INTERVIEW

もはや反社チェックは形式的ではダメ!会社の致命傷を防ぐ最重要リスクとしてのアプローチ法


近年、ニュースでも大きく取り上げられた大手芸能事務所のトラブルなどもあり、企業が最も気を付けなければならないことの一つになっている「反社会的勢力」との関わり。

年々、法改正もなされ、反社会的勢力と関わらないために行う「反社チェック」がマスト項目になった昨今では、対企業や対個人との契約時などにこの反社チェックを怠ると、後に思わぬ大問題に発展する可能性があります。

今回は、RISK EYESという反社チェックサービスの責任者でもあり、反社チェックのセミナー講師なども務める、ソーシャルワイヤー株式会社取締役副社長 庄子素史さんに、反社チェックの具体的な方法や、反社チェックを怠ることで発生するリスクなどについてお話を伺いました。


反社チェックの歴史と最新動向

― 反社チェックについて気をつけなければいけないということを認識している企業や担当者は多いと思いますが、なぜ今、反社チェックの必要性が高まっているのでしょうか?

その理由は2つありまして、1つは法改正がなされたこと、もう1つは社会的な関心が高まったことですね。

まず法改正ですが、2007年に企業暴排指針(企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針)が施行されて以降、2011年にすべての都道府県で暴排条例(暴力団排除条例)を施行、2018年からその暴排条例が改正され、さらに公証人法施行規則が一部改正されました。とくに公証人法は、定款認証の嘱託人が法人設立のときに実質的支配者になる者について、その者が暴力団などに該当するか否かを公証人に申告しなければならないという改正です。法人設立の段階から反社チェックを求められており、行政としても反社会的勢力の排除に力を入れていることがわかります。

実は、2007年に企業暴排指針が出るまでは、反社会的勢力と取引することにおいては、その取引内容が適正であれば、禁止されていませんでした。しかし、それ以降は反社会的勢力の資金源を断つためにも、内容の適否を問わず、反社会的勢力と取引すること自体が禁止になりました。その結果、多くの企業の契約書に反社会的勢力の排除に関する条項が追加されるようになりましたが、実際に取引を開始してから判明した場合に、様々な理由からすぐに取引を中止することが難しいのもビジネスの現実問題としてあります。従いまして、取引を開始する前段階からしっかりと取引先のチェックをすることが必要となっています。

もう1つは、近年反社会的勢力が企業に及ぼす影響に対する、社会的な関心が高まったことが挙げられます。例えば、直近だと大手芸能事務所に所属するタレントさんが、反社会的勢力の集まりに出席していた、ということが大きな社会問題になりましたし、金融機関が反社会的勢力とおそらく知りながら融資をしてしまったことで業務停止命令が下されたこともありました。

また、上場企業の役員が横領した金銭が、反社会的勢力に流れたのでは?という疑惑によって、該当企業の株価は20%も下がったという例もあります。この企業の場合は疑惑止まりで、企業側も否定していたので、真偽の程は定かにはならなかったにも関わらず、大きな影響を与えました。

実際に反社チェックサービスを提供している私たちでさえ驚いたのは、これらの不祥事に対する世間の大きな拒否反応です。反社会的勢力との取引を疑われることは、金融機関や投資家、証券市場、顧客、従業員、メディアなど、あらゆるステイクホルダーからの信用を一気に失うことになります。

不思議なことに、企業は与信や個人情報の管理に対しては高いリスク管理意識を以て臨む一方、いまだに反社チェックは何となくやらなければならない作業として考えがちです。しかしながら、昨今のステイクホルダーの反応を見れば、一瞬で企業活動を停止し、会社の存続にも影響を与える最重要リスクになったと言えるでしょう。

上場・非上場や業界によって異なる反社チェックの注意点

― 影響が大きいため、かなり広い範囲でチェックしなければならないと思いますが、業界や企業のフェーズによっても気を付けるポイントが違いそうですね。そのあたりはいかがでしょうか?

そうですね。まず、フェーズで言えば、大きくは上場前と後に分けられます。東証や大証などの取引所を傘下に持つ、日本取引所グループが反社チェックに対して重要視しているのは「本質的な反社チェックの運用ができているか」ということです。

反社チェックをどういう方法、どういうツールを使って行うのかというところは定められていなくて、重要なのは、その企業の経営者や主たる責任者が、自分の会社のどこにリスクが潜んでいるのかを把握出来ていて、かつそのリスク回避のための取り組みが運用されていることが重要、というわけです。

例えば、倉庫業を営む企業であれば、貨物を海外から運んで来る船舶会社やその従業員、貨物の所有者が反社会的勢力に当たるかもしれないというリスクがありますよね。他にも、取引額が大きい商材の場合は、当然不祥事が起こった場合の会社に与える損害も大きいため、契約前に取引先の代表者に直接会い、オフィスを見て、話を聞いて、掲示板などで風評までチェックをすることで、リスクチェックをすることも必要でしょう。

業種やビジネスモデルによって反社会的勢力が入り込んでくる導線は異なるため、自社のリスクポイントやリスクの大きさを正確に把握し、回避のための仕組みが運用されていることが重要だということです。

上場前は、経営者が自社のリスクを把握し、この反社チェックの仕組みが一定期間しっかり運用されていないと上場承認が下りませんし、法改正がなされてからは、すでに上場済みの企業であっても、同様の対応が求められています。前述のように株価にも影響してきますから、株主からも厳しくチェックされますよね。

また、取引後もモニタリングが必要です。契約時には健全だった企業でも、なにがしかの不祥事をきっかけに反社会的勢力に付け込まれてフロント企業化してしまうケースもあるため、定期的に既存取引先や従業員が反社会的勢力と関連ができていないか、反社会的行動をとっていないかチェックする必要があります。

業界別に見ると、特にチェックの範囲が広い業界として金融と不動産が挙げられます。

まず金融の場合、最近はFintech企業も増えていますが、マネーロンダリングに直結しやすいというリスクがあることが最も大きな点です。ということは、口座を開設する企業や個人すべてにおいて、反社チェックが必要になりますので、膨大な量になりますね。加えて、最近はクラウドファンディングで、複数の小口融資が集まることもありますので、その場合、思わぬうちに反社会的勢力から融資を受けてしまっていたなんて場合もあり得ます。金融は重要度が高いうえに、チェック件数が多いため、いかに抜けもれなく、且つ効率的に取り組んでいかなければならないかが課題だと感じます。

次に不動産です。不動産の場合は、1回の取引額がかなり大きいので、その分リスクも高まります。注意してチェックしなければならないのは、土地の地権者、発注する建設会社、テナントに入る企業や個人などですが、1つの建物に反社会的勢力の人間が1人でも関わっていたら、一瞬にしてその建物の価値はゼロになってしまうのです。多くの物件は、先に融資を受けて、何百億、何千億の建物を建てますが、判明した瞬間に融資を受けた金融機関も手を引いてしまいますので、これはかなりのリスクです。また、売買だけではなくビル管理会社においても、管理する物件に反社会的勢力が入居して風評が流れることで物件価値が毀損し、借り手がつかなくなるため、入居者のチェックを迫られているのが現状です。

効率よくリスクを回避するために反社チェック運用のポイントは?

― 本当にリスクが大きいですね・・・。しかし、取引先やその先の個人を含めると、想像しているよりもかなり広い範囲のチェックが必要になりそうですが、反社チェックの具体的な方法を教えていただけますでしょうか?

まずは、業界団体や協会が存在しているのであれば、そこの持っている情報に頼る方法や、警視庁管内特殊暴力防止対策連合会(特暴連)などに加入して、未然に防ぐ方法をアドバイスしてもらう方法もあるでしょう。

また、最も日常的な自助努力の運用として行うべきものとして「公知情報」をチェックすることですね。Googleなどの検索エンジンを使って、過去の新聞記事やWEB上の反社や犯罪情報を検索することです。情報を検索したら、次に検索結果を基に判断することが重要です。さらに、どのようなキーワードでチェックを実行したのか、そしてその結果こう判断した、という運用履歴を残し、それを積み上げていくことが仕組みの運用になります。

ただ、この場合のネックとしては、もちろんGoogleなどの検索エンジンは反社チェックのためにあるツールではありませんから、例えばSEOが強い検索対象会社のホームページや採用ページ、広告掲載サイトなど、反社情報には無関係の情報も検索に引っかかってしまいます。その結果、閲覧対象の情報が膨大な量になってしまい、必要な情報を取捨選択するのが難しくなり、そのチェックに当たる人の人件費や手間の部分のコストがかなりかかって来ます。

毎月、何百社も新規取引先や顧客が増える企業や、既に何千社も取引先がある企業が、1つのキーワードの検索結果を10ページ以上にもわたって閲覧するのは現実的に難しいでしょう。

そのため、そこまでの人的工数を割けない場合は、当社が提供する「RISK EYES」などの反社チェック専用に開発された専用ツールを活用することで、最初から不要な情報を省いてくれ、必要な情報のなかからチェックすることが可能になるため、効率の良い反社チェックが可能になります。

― 確かに、情報量が多すぎる結果、しっかりチェックが出来なかったとしたら意味がなくなってしまいますよね。いかに手間をかけずに反社チェックの仕組みを構築するかというのが、各企業にとってとても重要なことなのですね。

そうですね、形式的なチェックでは本質的な意味がないですし、必要な時だけではなく日々行う必要があることですので、自社のリスクの存在箇所とリスクの大きさをしっかりと確認し、それを踏まえたチェック方法で反社チェックを運用に落とし込んで欲しいですね。もし、自社にあったチェック方法が分からない場合やより効率的なチェック体制の構築を検討されているのであれば、外部の専門家やセミナーなどを活用しながら、世の中が注目している今だからこそ、これを機に一度しっかりと検討するのがよいと思います。


庄子さんによると「これから導入を進める上場準備中の企業だけでなく、既に反社チェックを実施しているが、現在の反社チェックの効率化の必要性や体制そのものに疑問を感じているという担当者も多い」ようです。また、反社チェック業務を「非常に重要な業務であるという認識はあるが、そこまで時間をかけて対応するのが難しい企業が多いのが実情」だそうです。

反社チェックの運用をしていても、実は本質的なリスク回避ができていないという企業は、意外と多いのかもしれません。読者の皆さんの会社では、反社チェックの内容や運用状況はいかがですか?

反社チェックについて情報収集したい方や、他社の事例が気になる方は、一度同社が開催している無料セミナーに情報収集に参加してみるのも良いかもしれません。


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