インタビュー&コラム
なぜIPOを目指すのか?多くのベンチャー企業がIPOを目指す理由とは
IPO(Initial Public Offering)とは、「新規公開株」や「新規上場株」のことを意味しています。具体的には、証券取引所に上場して、自社の株式を開放して、誰でも自由に株の売買ができるようにすることを言います。株式会社といっても、上場して誰でも株を売買できるようにしている会社もあれば、自由な経営が難しくなるなどのデメリットを考慮して、あえて上場しない会社もあります。
情緒的な理由
「会社が上場している」ことは、一種のステータスでありそれだけで魅力があります。実際には、企業の成長の通過点にすぎなくても、上場がひとつのゴールと捉えている起業家は少なくありません。また、投資家は、創業後何年で上場したかに注目し、それによって勢いのある企業かどうかを見分けている傾向があります。
一般的には、創業後20年以内のIPOであれば投資家に好まれ、10年以内だと人気化することが多くなります。人気化すれば、知名度がアップし、従業員のやる気や心理的なステータスが上がるため、特に若手起業家は早期のIPOを目指す傾向にあります。
資金集め
IPOを目指すことは、単純に株式を誰でも購入できる形にすることで、資金を集める意図があります。上場していない企業にとって、資金を得るには経営上の利益のほか、知り合いからの融資や銀行などの金融機関からの借入などの方法があります。ただし、従業員への給与や設備維持などに費用がかかり、これだけでは新規事業の展開や店舗増設、新技術の導入などには不十分といったことも起こり得ます。その場合、知り合いや銀行からだけではなく、一般の人々にも株を買ってもらい資金を得る方法を選択する企業があります。
IPOを目指し、上場するということは、このように多くの人々から資金を調達できることを意味しています。
信用を獲得する
上場するためには経営状態などが良好でなければならないため、上場企業=経営状態の良好な企業と見なされます。「上場企業=一流企業」というイメージがつきやすくなり、法人向けのB to B営業の場合には、これまで取引してくれなかった企業が、上場したとたん取引してくれるようになったということも生じます。
上場するということは、厳しい基準をクリアしているということを意味しており、その分だけ信用が高まり、経営の幅が広がります。
上位大学出身の人材が集まりやすくなる
IPOを目指す若い企業にとって、人材の確保は課題です。いかに効率よく、有能な人材を雇うかが、会社の未来を大きく左右します。また、最近では売り手市場と言われ、学生にとっては就職しやすい状況である一方、企業にとっては採用が難しくなっている現状があります。
そのような状況にあって上場するということは、安定した信頼できる会社であることを周囲にアピールすることになり、学生にとっては採用されることが一種のステータスとなることから、人材が集めやすくなると言えます。上場のデメリットを知っている方でも、身内が「上場企業に就職した」と聞くと一安心するのではないでしょうか。
上場企業とは、一定の信頼性を有していることを意味し、その分、学生が集まりやすくなると言えます。
創業者利益が得られる
一度上場すると、誰でも株価を売買することができるため、創業者が持ち株を売るということもできます。だいたい上場する会社は、そのころには持ち株にも相応の値段がついており、利益が出やすくなります。
一般に、創業者が上場して株を売った際の利益を創業者利益と言いますが、持ち株の大半、あるいは全てを売ることは、創業者の経営への情熱が薄れていると見られることもあり、返って業績不振を招きかねません。ですので、創業者が売る株は数パーセント程度にとどめるのが普通です。しかし、それでも一度にまとまったお金が入ってくるのは魅力です。創業者利益がIPOを目指す目的ではないものの、モチベーションの一つにはなっているはずです。
上場のデメリット
以上のように、IPOを目指す理由には様々なものがありました。しかし、冷静な判断をするには上場することのデメリットも同時に考慮しておく必要があるでしょう。
上場のデメリットとしては、経営情報を公開しなければならないこと、株式関連の実務が多くなってしまうこと、買収のリスクが生じること、株主総会を開いて意見を聞かなければならない状態になること、それによって経営が自分の自由な意志だけで行うことが難しくなることがあげられます。
これらは、株を公開し、誰でも購入できる形にするために必要なことばかりですが、それまでになかった株式関連の管理費用や情報システムに相応の費用を割く必要が出てくる上に、あれこれ外部から発言される機会が増えることから、上場を目指さない企業もあります。