インタビュー&コラム
INTERVIEW

上場を目指す企業が増える中、今IPOをスムーズに達成するために必要なこととは


ドキュメント作成のプロ集団に、上場準備の本質を聞く

企業のディスクロージャー支援をする老舗である、宝印刷株式会社。60年以上の歴史を持つ同社は、ドキュメント作成に関するクオリティの高さやサポートの手厚さで、永きにわたり顧客との信頼を築いてきた。今回は、大手証券会社で公開引受に従事した経験を持つ同社執行役員・企業成長支援部部長の大村法生氏、同部の萩原亜矢子氏に、同社のIPO支援の特徴や、最近のIPOを取り巻く環境について聞いた。

宝印刷株式会社

1952年の創業以来、ディスクロージャー並びにIR関連物のコンサルティング、制作、印刷などを専門的に行う事業を展開。近年は、人材紹介事業に参入したり、TOKYO PRO MarketのJ-Adviserとして新規上場企業を創出する事業を開始する等、IPO支援に力を入れている。

書類作成の苦しみから担当者を救い、企業の上場達成をサポート 


執行役員・企業成長支援部部長 大村法生氏

御社のIPO支援について教えてください。

大村氏:我々は、「企業成長支援部」という変わった名前の部署に所属しているのですが、これは、上場支援をする部隊です。

宝印刷の本業は、上場企業がディスクロージャーするときの、ドキュメンテーションのサポート、すなわち法定書類等の作成ツールの提供やチェックです。IPOの場合には、開示書類は上場申請の段階から必要になるものなので、上場を目指されている企業の書類作成に係るサービスも提供しています。その中で、上場準備に伴うさまざまな悩みの相談相手になり、ツールや関係機関を紹介することで、上場を支援する活動を幅広く行っているのです。

IPO支援についての、御社の強みは何でしょうか?

大村氏:開示書類のプロという点です。もともと宝印刷という会社は、戦後、証券取引法が導入され、有価証券報告書や有価証券届出書という書類を作らなければならなくなったとき、大蔵省の役人で書類を受理する立場にあった創業者の野村が、「これは誰かが教えてあげなくてはいけないのではないか」ということでビジネスとして始めた会社です。つまり、昭和20年代からずっと、それをやってきているわけです。「長くやっているから得意」というのは短絡的かもしれませんが、実際そこにプライドを持ち、積み重ねた経験を活かしてサービスを提供するため、そこに人員も多く配置しています。

きちんとした書類ができることによって、企業にとってはどんなメリットがあるのでしょうか?

大村氏:結果的には、スムーズに上場を達成することにつながります。上場する際には上場審査をパスしなければなりませんが、申請時点でドキュメントの作成能力が低いと、上場後の運営を不安視されて上場が認められないリスクがあるのです。審査に一度つまずいてしまうと、上場が1~2年延びることにもなりかねません。そうならないために、当社が寄り添い、プロとして書類作成をサポートすることで、上場達成に貢献することが我々の使命のひとつだと考えています。

適切に正しい開示書類を作成できることは、上場に失敗しないための一つの重要な要素ということです

自動化システムとエキスパートによる人的パワーを申請から上場後まで提供 

具体的には、どのような形でサービスを提供されているのですか?

大村氏:上場申請書類作成の記載要領やノウハウなどを、文書やウェブサイトで情報発信したり、上場申請書類を含めた法定書類を作るためのシステムを販売しています。当社の開示書類作成システム「X-Smart.」シリーズは2017年9月に全面リニューアルをしており、使いやすいと高評価をいただいています。

今後も、お客様の声をもとに改善を続けていきますが、方向性としては開示書類作成の自動化に注力し、人材不足に悩む企業の省力化に貢献できればと考えています。

ウェブサイトでは、どのような情報を得ることができるのでしょうか?

大村氏:上場を目指す企業向けに「IPO Club」という会員制のポータルサイトのサービスを提供しています。例えば、上場準備の過程で、社内規程の整備を行っている場合、最新の規程のひな形がダウンロードできたり、他にも上場準備に必要なツールが入手できたりします。

システムを使うのは難しくないのですか?

大村氏:開示書類作成システム「X-Smart.」の入力は簡単にできるよう工夫されています。わからないときにはサポートセンターに連絡いただければすぐに解決できるという体制を整えていますので、ご安心ください。電話を受けるのは、法定開示書類の書き方に詳しい研究部という部隊や、仕組みに詳しいシステム担当者です。研究部は、60人を超える人員を配置してサポートの品質担保に注力しています。特にこだわっているのは、お客様からサポートセンターに電話があって相談されたときに、極力「担当者におつなぎします」といった形でたらいまわしになることがないようにしている点です。基本的には、電話をとった人が答えられる、答えられる人が電話に出る、ということを徹底させています。

増えるIPO予備軍、厳しくなる上場審査 

最近のIPOについて、傾向があれば教えてください。

大村氏:ここ数年の中では一番、IPO予備軍は増えているのではと感じています。政府を含めて、日本全体がベンチャーを支援しようというモードになっており、ベンチャーへ資金を提供するファンドや事業会社も増えています。景気に関しては、さまざまな見方がありますが、決して悪くないと思います。新しい事業の担い手が成長していけるような状況であることも、上場を考える企業が増える理由の一つだと言えるでしょう。

一方で、上場審査は厳しくなっている傾向があります。また、上場するために必要な監査を行ってくれる監査法人を探すのに苦労をしている企業も増えているようです。今、監査法人はどこも人手不足で、新規の案件を受ける余裕がないからです。

実際に、我々も「監査法人を紹介してほしい」と頼まれることが増えています。上場は、証券会社や監査法人、証券印刷会社などがチームを組んで取り組んでいくものなので、必要なチーム作りをサポートする一環で、実際に監査法人をご紹介することも増えています。

スムーズな上場達成に必要なのはプロジェクト管理と業績


企業成長支援部 萩原亜矢子氏

御社がIPO支援された企業で、印象に残ったエピソードを教えてください。

萩原氏:長く関わった企業が上場を達成されたときには、やはり嬉しいですし、「ありがとう」と言ってもらえるのが喜びでもあります。

上場が見えてくると、主幹事証券や監査法人など、関係機関が認識を揃えるためにミーティングを行うことがあります。とある企業でそれを行ったときに、少数精鋭で準備を頑張ってこられた姿を見ていたので、どうしても上場していただきたいと、帰りのエレベーターの中、関係者全員で想いを確認したという印象的なことがありました。その後、無事に上場を達成され、東証の上場セレモニーを見学したときは感動的でしたね。

IPO準備をスケジュール通りにスムーズに進められる企業とそうでない企業に違いはありますか?あればそれはどんな点ですか?

大村氏:次元の違う話と思われるかもしれませんが、どういう企業が上場しやすいかと言われると、「本業が順調な会社」と答えます。その企業が進めている事業が順調に進んで、利益も大きくなっていれば、当然上場もスムーズに運ぶのです。

上場することを目的として変な小細工をするより、まずは本業を頑張っていただくのが先決です。「好業績は七難隠す」と言ったりしますが、審査の人間にアピールするためにも、やはり本業が順調であることが大前提ですね。

また、上場に関するプロジェクトを担当者や専門家任せにするのではなく、関係者が協力し合って取り組む体制ができている企業は、スムーズにいく傾向にあります。誰か任せにしている企業は、その人がいなくなると全て止まってしまうことになりますから、上場を目指すかぎりは、いわゆるプロジェクトコントロールできる企業かどうかが非常に重要になってくるのです。

実は、結局プロジェクト管理は本業とも関係していて、それがきちんとできている企業は、本業も順調で、上場準備も順調だということです。

上場後のIRを見据えた上場準備が成功の秘訣 

御社の今後の取り組みについて教えてください。

大村氏:IPOによって、それまで非上場だった企業の経営者が、上場企業の経営者となり、自分の会社を広く一般の投資家にアピールしていかなくてはなりません。そのIRサポートにも、今後ますます力を入れていきたいと考えています。

株式市場にデビューするIPOは、世の中に自分の会社をアピールする絶好の機会です。当然、上場承認後にアピール方法を考えていたのでは遅く、事前に準備しておくことが大切になります。当社は、上場の準備段階からずっとお付き合いしていく立場として、当社だからこそわかる会社の強みを発信する提案をしていければと思っています。

法定書類作成をきっちりサポートするパートナーという従来からの本業は、これからも自信を持って行いながら、法令で決められたことだけでないさまざまなツールを、幅広く提供していける会社を目指していきます。特にIRには力を入れ、「IPO段階からのIR」ということを重視して取り組んでまいります。

最後に、これからIPOを目指す経営者や管理部門の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。

大村氏:IPOは、一つの大きなプロジェクトです。社内外の関係者とチームを組んで取り組むことが必要になっていきます。上場するために必要と思われることであれば、枠を決めずに我々がサポートさせていただきますので、上場を目指される際は是非、お声がけください。

宝印刷株式会社 TAKARA PRINTING CO.,LTD.
https://www.takara-print.co.jp/
住所 〒171-0033 東京都豊島区高田三丁目28番8号
創業 1960年4月
設立 1952年6月
従業員数 731名 (2018年5月31日 現在)


宝印刷株式会社

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